収入が高い職業の方の離婚

財産分与について

【原則】
財産分与において、妻が専業主婦であったとしても、夫婦が婚姻期間中に築いた財産は、原則として2分の1ずつに分けられます(2分の1ルール)。 

夫婦の一方が働いて築いた財産であっても、その所得の2分の1は、夫婦のもう一方の支えによって得られたものだと考えられているからです。

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(参考裁判例)
広島高等裁判所平成19年4月17日判決
夫婦が婚姻期間中に取得した財産は、夫婦の一方の所得活動のみによるものではなく、他方の家計管理や家事・育児等を含む夫婦共同生活のための活動の成果として得られたものというべきであるから、妻が専業主婦の場合の財産分与の判断においても、家事従事による寄与を正当に評価する必要がある。
本件においては、一審原告は、婚姻後、一審被告Bとの同居期間中、仕事に就いたことはないが、専業主婦として家事や育児に従事し、夫婦の共同生活の維持や一審被告Bの所得活動による財産形成に寄与してきたことが認められる。これらの事情のほか、扶養的要素も考慮すれば、財産分与割合は2分の1とするのが相当である。

【例外】
ただし、この「2分の1ルール」には例外があります。例えば、夫婦の一方が医師や自営業者の場合です。高額な収入を得るための技能が、婚姻前の個人的な努力によって形成された場合共有財産の形成に対する夫婦の寄与割合が、必ずしも2分の1であるとは言えなくなります。そのため,例外的に財産分与割合が2分の1にならない可能性があるのです。
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(参考裁判例)
大阪高等裁判所平成26年3月13日判決
民法768条3項は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して分与額を定めるべき旨を規定しているところ、離婚並びに婚姻に関する事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して制定されなければならないものとされていること(憲法24条2項)に照らせば、原則として、夫婦の寄与割合は各2分の1と解するのが相当であるが、例えば、《1》夫婦の一方が、スポーツ選手などのように、特殊な技能によって多額の収入を得る時期もあるが、加齢によって一定の時期以降は同一の職業遂行や高額な収入を維持し得なくなり、通常の労働者と比べて厳しい経済生活を余儀なくされるおそれのある職業に就いている場合など、高額の収入に将来の生活費を考慮したベースの賃金を前倒しで支払うことによって一定の生涯賃金を保障するような意味合いが含まれるなどの事情がある場合、《2》高額な収入の基礎となる特殊な技能が、婚姻届出前の本人の個人的な努力によっても形成されて、婚姻後もその才能や労力によって多額の財産が形成されたような場合などには、そうした事情を考慮して寄与割合を加算することをも許容しなければ、財産分与額の算定に際して個人の尊厳が確保されたことになるとはいいがたい。

婚費分担について

 【原則】
夫婦は、婚姻中にかかる生活費等、いわゆる婚姻費用を互いに分担しあわなければなりません(民法760条)。そのため、別居中や離婚の話し合い中、あるいは調停などの法的手続き中であったとしても、離婚が成立するまでは、収入の少ない側は、収入の多い側から、婚姻費用として生活費を支払ってもらえます。
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【例外】
しかしながら、不貞行為をした側の有責配偶者が別居を強行した場合などには、その者は、自分の生活費にあたる婚姻費用を請求することができなくなる場合があります。
ただし、このような場合でも、子どもに罪はありませんので、同居の子どもの監護にかかる分の婚姻費用は求めることができます。
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(参考裁判例)

東京家庭裁判所平成20年7月31日審判
別居の原因は主として申立人である妻の不貞行為にあるというべきところ、申立人は別居を強行し別居生活が継続しているのであって、このような場合にあっては、申立人は、自身の生活費に当たる分の婚姻費用分担請求は権利の濫用として許されず、ただ同居の未成年の子の実質的監護費用を婚姻費用の分担として請求しうるにとどまるものと解するのが相当である。